現代美術作家・石塚隆則さんによる展覧会「河童解放区―KAPPA ASYL」が現在、二の宮公園野外プール(つくば市二の宮1丁目)とgallery neo_/Senshu(つくば市千現1丁目)で開かれている。主催はART PARK Tsukuba2025実行委員会。
つくば市二の宮公園を起点に、公共の場でアートの形を探るプロジェクトとして2023年にスタートした「ART PARK Tsukuba」。
石塚さんによると、茨城県ゆかりの河童の画家と言われた小川芋銭から本展を構想し、「河童とはなんなのか」と1年にわたり、古今東西の河童にまつわるリサーチをノートに書き出す日々を過ごしたという。
会場について、石塚さんは「夏の2カ月以外は使われずにぽっかりと時間が止まったような野外プール。この『空白地帯』にこそ、場所の気配を受け止める余白があるのではないかと感じた」と話す。「牛久沼や利根川には河童がいたという伝承がある。もしこの街に河童が『いる(いた)』と仮定するならば、きっとこうした人間の気配が薄れる空白な場所にいるのではないか。そんな想像から、この野外プールを河童の『解放区』として構想した」とも。
ギャラリー空間では小川芋銭の画題を木彫で表現した作品を展示する。石塚さんは芋銭の著作『俳画の描き方』にインスパイアされ、墨でドローイングを重ねながら彫刻造形の方向性を模索したという。
彫刻は、木の骨組みにスタイロフォームで肉付けを行い、漆喰(しっくい)で造形した上にポリエステル樹脂を塗布して仕上げた。石塚さんは「屋外という環境下で耐候性を保ちながら、身体の量感や表面の質感を調整できる素材、工程を選んだ」と話す。当初は陶器のうわぐすりが持つ「ぬめり」を河童の身体表現に生かせないかと考え、笠間で焼き物による制作も試みたという。
展示では、河童と同じ空間に身を置くことを重視する。石塚さんは「野外プールという場所のスケール感や冬の時間の止まったような雰囲気が、作品体験の一部となるよう意識している」と話す。
「普段は無意識に通り過ぎてしまう場所が、少しだけ違った場所へと変わる。その変化をきっかけに、見ていない『こと』や『場所』に気づいてもらえたら」と石塚さん。「河童というモチーフは、自分とは違うものに向き合うための『媒介』のような存在。河童を通して、異質な存在に対する姿勢や、場所との関わり方をあらためて考える機会になれば」とも。
11月30日は、二の宮公園野外プール入り口でトークイベント「地方における現代アート」(12時~13時)を行う。
開催時間は金曜・土曜・日曜・祝日=12時~17時。入場無料。11月30日まで。