アグロデザイン・スタジオ(つくば市千現2)が1億円の資金調達に成功した。
同社は2018(平成29)年につくば市で創業した、農薬業界では珍しいスタートアップ企業。社長の西ヶ谷有輝さんは農研機構(つくば市観音台3)の研究者でもある。今回の資金調達について「まだまだ研究開発を進めるには足りないが、やっとスタート地点に立てた」と話す。
同社の農薬は、害虫だけが持つタンパク質にアプローチし、開発の過程でも大量散布を行い一定の効果が出れば製品として採用されていた従来のものより環境負荷が少なく、効果的に開発を進められる。
「農業系のスタートアップはまだまだ少ない」と言う西ヶ谷さん。元々起業に興味があり、ビジネスプランコンテストに出場し、優勝したことから本格的にその道を模索。2018(平成30)年に同社を設立した。「メンターの中に投資家がいたということもあり投資家周りを始めたが、当初は全然駄目だった」と振り返る。
従来の医薬品開発モデルを農薬に応用したビジネスモデルも評価され、資金調達に至ったという。「薬剤開発は難しい。世に出ている製品で開発期間とお金が最もかかるものが医薬と農薬だと言える。自分が研究した製品が全く製品化されないまま一生を終える研究者も少なくない。だったらやってやるぜという気持ちでやってきた」と話す。資金調達の通知を受け取った日は「旅行にでも行く気分になるかなと思っていたが、意外にも全くうれしいと思えなかった。3年近くかかって、やっと調達できた1億円。もう戻れないと腹をくくった」と笑う。
今後について「1年から1年半ごとに資金調達していき、黒字になるまでに10年ほどかかる見込み」と言い、「研究開発とビジネスの両立はもちろん厳しい。それでも挑戦し続けたい」と語る。「無農薬野菜が占める割合は全体の2%。98%に農薬は使われていて、確実に少しは残留し間接的に口に入る。人がどうしても摂取してしまう農薬をなるべく安全なものにしたい」と意気込む。