高齢者向けのサポート付きオンラインサロン開設プロジェクトが5月1日、立ち上がった。高齢者の社会活動支援を行うUDワークが主催。
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、情報を受け取れない高齢者の支援と、活動を自粛している市民団体をオンラインサロンという形でつなぐ同プロジェクト。高齢者にタブレット端末を貸し出し、使用方法を講習。市民団体が提供する音楽療法や体操といったコンテンツを見られるようにサポートすることで、自宅での講座受講やイベントへの参加が可能となる。同団体代表の前田亮一さんは「今は緊急事態。一刻も早く対策をしなければ高齢者の孤立を生んでしまう」とプロジェクトの立ち上げに踏み切った。
デイサービスでの高齢者サポートも行いづらくなったという。前田さんは「改めて高齢者を取り巻く環境を近くで見ている立ち位置だと自覚した」と話す。つくばでも独居や老老世帯が増えており、関東圏に住む家族がサポートしている家庭もある。「今はそれすらもできない。2週間後や1カ月後にどうなるか想像ができた。この状況はまったなし」と話し、「特に情報へのアクセスが全くない。SNSで簡単に知れる情報を受け取れる術がない」と危機感を抱く。「高齢者がサービスを受けられるところも減っている。オンラインを使うことができればデイサービスも生き残ることもできる」と力を込める。
作業療法士の前田さんは、デイサービスや訪問リハビリテーションでの高齢者との関わりを通じ、「要介護状態や障がいのある人であっても、知識や経験が豊富で、私たちが知らない大切なことを知っている。季節を大事にした生活やつくばのおいしい野菜や歴史を子どもたちにも知ってもらいたい」という思いで、2018(平成30)年10月から、月に1回開催されるマルシェ「まめいち」に出店。高齢者と共にイベントに参加し、地域との関係をつくってきた。「外出や、人との交流で高齢者が生き生きとし、元気になっていくことが分かった」と振り返る。このイベントへの定期的な参加によって出店者側とのつながりもできた。「イベントを開催する側だった仲間も活動の場を失われている。自分がコンテンツを作って提供するのではなく、両者を結びつける場を作りたい」と前田さん。
現在は体験会を試験的に実施し、この仕組みを検証している。「高齢者の参加も多く、遠方の家族とやり取りしたり、悩みを相談したり、健康づくりのために活用してもらっている」と話す。体験会の実施はサービスの対象者となる高齢者のためだけでなく、この仕組みを広める医療、介護関係者の巻き込みのためにも行っている。「高齢者は行政など、上からの指示だけでは新しいことを取り入れづらい。デイサービスなどで今までにも関わってきた人からこの仕組みを進められると抵抗が少なくなる。もちろん民間だけでは足りない部分もあるので、行政とも協業し、横と縦のつながりでこの仕組みを広めたい」と意気込む。
現在、クラウドファンディングでの活動資金の調達を行っている。前田さんは「県内だけでなく全国から支援があり、関心の高さを感じている」と手応えを語り、同様の取り組みをする団体との連携も行うという。
クラウドファンディングは6月4日まで。