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つくばの公園でコミュニティー運営 境界線なくす仕組みを

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つくばの竹園エリアに2020年、リニューアルした竹園西広場公園(つくば市竹園1)に併設される形でマンションとベーカリーカフェ「cafe boulangerie takezono」がオープンした。公園リニューアルによって何が変わったのか。意外と難しい公園とパン店の関係や芝生を中心に広がる地域コミュニティー運営について、デベロッパーであるフージャースコーポレーション(東京都千代田区)の大東絵理子さんに話を聞きます。

-デベロッパーで公園のマネジメントまで手掛けるのは珍しいかと思います。

 土地にマンションを建てるだけの時代は終わったと感じています。今私たちがやっている活動の一つが、できあがった公園を管理し価値を維持することです。

-そもそもなぜ、つくばでやってみようということになったんでしょうか?

 この15年間で供給した住宅は戸建て192戸、マンション1305戸。これはフージャースとして展開してきた他のエリアと比較しても数が多いです。今回の開発に当たり、マンションを造る以外に、つくばの資源を生かした取り組みができないかと考えました。フージャースはマンションの管理も自社でやっており、コミュニティー醸成に力を入れています。マンション作りの次のステップとして『まちにコミュニティーをつくる』のは面白いのではと考えていたところに、15年間やってきたつくばだからこそ、それができるのでは、というのが始まりでした。

-竹園西広場公園に注目したきっかけは?

 筑波大生が調べたデータで、つくば市で一番使われていない公園の目の前でマンションを造ることになっていました。それが竹園西広場公園だったのです。利用率の低い公園はきっと行政にとっても課題になるだろうと思いました。市民に使われる公園に変えられたら、地域の課題解決になるのではというのが発端です。

-具体的にこのプロジェクトが始まったのはいつごろですか?

 特別な部署として公園再生プロジェクトが立ち上がったのは2018(平成30)年です。マンションの企画と共にスタートしました。ポイントとしてまず、マンション敷地とまちの境界線を「意図的にあいまいにする設計」や、提供公園ではなく市の公園を民間の費用でリニューアルした点が挙げられます。公園だけ造っても人の流れは生まれません。そこで人の流れを考え、カフェを設けるという案が出ました。つくばは「パンの街」と言われていることから、ベーカリーを入れたいと考えました。

-公園の近くで店を営業するのは大変ですか?

 公園のデザインを担当したランドスケープの専門家は、「都市空間にとって境界線はいいものではなく、ただ管理をしやすくするためのもの」とおっしゃっていました。今回は行政単体ではなく官民連携でのプロジェクトだったので、この課題に向き合う機会だと思いました。デッキは、まちの人もマンションの住人も使える造りにしました。フェンスになるべきものはチェーンとポールや階段になっています。通常、公園の敷地内で営利企業が営業することは公益に反するため難しく、境目にフェンスなどを作る必要があります。しかし、私たちがやりたかったことはパン店と公園の共存です。境界線をなくすための仕組みをつくば市と整えました。つくば市とは覚書を結び、緑化を推進、魅力的なまちにするように、とオーダーを頂きました。覚書は検索すると出てくるので、内容が気になる人がいればご覧になってください。

-任意団体「つくばイクシバ!」の立ち上げも特徴的ですね。

 フージャースだけではなく、地域の企業(一誠商事、クーロンヌジャポン)や住人を巻き込んで芝生の管理運営を、せっかくなら楽しく、ということで団体を作り活動しています。月に1回集まって芝生の手入れをしているだけなのですが、飛び入りの参加者がいたり、活動できる地域コミュニティーを探している方がいたりと、地道に輪が広がっています。*活動は毎月第2土曜の日9時~10時

 そもそもは芝生を安く「高品質に」育てる方法を探しているときに、東京で活動している「イクシバ!プロジェクト」を見つけました。この活動はコミュニティー作りにも役立つのではと思い、つくばでの発起人として団体の運営をしながら芝生を見ています。この活動は一時的なものではなく、持続させることに価値があると考えていますので、地域の方々に愛着を持っていただける仕組みに育て上げ、将来的には完全に地域で運営を回していただけるようにしたいと考えています。

-公園の利活用というと、東京都豊島区の南池袋公園が成功事例として挙げられますが、比較すると竹園西広場公園の取り組みにはどういった特徴がありますか?

 南池袋公園は大規模な公園で集客できる層やエリアも幅広く、遠方からも人が訪れます。大勢の人が訪れる都会の公園として高額な管理費がかかっています。竹園西広場公園は住宅街にある小さな公園です。利用者も限られますから、周辺の住人の『お気に入りの公園』として一緒に育てる意識を持ってもらいたいと思います。つくばイクシバ!の取り組みは、つくば市のアダプトアパーク制度を利用しており、他の公園にも応用してほしいと思っています。

-2019年9月にはマンションに先駆けて公園だけリニューアルオープンしましたね。

 水はけが悪いという課題があったので、土壌改良を行い、芝生を張り、滑り台を設置するなどしました。元々利用が少なかったこともあり、単に公園をリニューアルしただけでは認知されないので、コーヒーを配るピクニックイベントやヨガイベントを開くなどして、公園の認知向上を目指しました。公園は使ってもらってこその存在です。

-ヨガイベントなどを行い、理想的な利用風景を提示している印象がありますが。

 ヨガは屋外なので天候に左右されますし、新型コロナウイルス対策のため現在の開催数は少ないですが、屋外で行うヨガはリラックスできると好評でした。ヨガイベントは公園利活用の目的だけでなく、芝生の理解を深めてもらうきっかけになると考えています。そういうところからも芝生が育つのを楽しんでもらえれば幸いです。リニューアル後のアンケートでも好評のようです。

-2020年12月にパン店「クーロンヌ」がオープンし、その前月にはマンション「デュオヒルズつくばセンチュリー」が竣工しました。
 クーロンヌはコミュニティーの核だと考えています。社長が地域コミュニティーに関わることに前向きだったこともあり、イクシバの活動にとっても核となってくれています。アルバイトの顔合わせに出席させていただくなど、ありがたいことにクーロンヌの広報、店舗の運営戦略にも顔を出させてもらいました。公園も芝生もパンもコミュニティーも、全てのストーリーがつながっていないと価値は持続できないと思っているので、とてもありがたいです。クーロンヌ社は従業員の育成や、人と地域とパンをつなげることを大切にする社風です。協力いただき、公園のウッドデッキ部分にテーブルと椅子を設置するほか、ござの無料貸し出しも始めています。

 公園の利用者が「この公園いいな」「好きだな」と思った次に「だから守りたい」となった時、その活動を支えるためにはハブになる「人」がいないと継続していかないのではと考えています。ハブになれる具体的な「人」がいないと場は活性化しませんし、いつまでもデベロッパーとして私たちが関わるよりも、地域の店や住民の皆さんが芝生を守る活動を介して、自立した地域に根差すコミュニティーに育っていってほしいと思います。

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