筑波大学(つくば市天王台1)は5月28日、研究者が英語や日本語で論文が出版できる世界初の「オープンリサーチ出版ゲートウェイ」の開発に向けた契約を締結した。2020年11月の公開を予定している。
出版ゲートウェイは、論文だけでなく著者と査読者との議論が掲載されるサイト。同大所属の研究者が迅速に、オープンな方法で研究やデータの出版が可能で、研究者は英語で書くか日本語で書くかを選べる。全ての成果は無料で公開され、誰でも自由に読めるようになる。同大URAの森本行人さんによると、このようなモデルを採用するのは日本の大学では初の試みであり、「英語以外の言語が採用されるのも実は初めて。日本語で書かれた優れた研究成果がこれまで以上に可視化できる。特に人文学や社会科学の研究者が日本語を選択できることは、日本の歴史や思想、文学といった日本語を使うことでより深い議論ができる分野にとっては画期的なモデルとなる」と森本さん。
論文の発表には、論文を書くだけでなく、編集者側で誤りがないかどうかや掲載できるかを協議する査読が必要。改稿や修正を重ね、論文掲載誌の出版時期を待ってから公開となり、論文の投稿から早くて半年、遅いと2年近くかかる。同ゲートウェイに投稿するとおよそ2週間後に公開され、後から査読が行われるため、投稿から公開までの時間が大幅に短縮される仕組みとなっている。「一刻を争う場合、大きなメリットとなり、著者のためになるように設計されている」と話す。
森本さんは「学術情報流通が変わろうとしている。研究と学問、そして言語には壁があってはならないという理念をF1000 Research社と共有し、連携してF1000Research出版モデルを世界で初めて英語以外の言語で可能にすることで、日本と世界の学術情報コミュニケーションに一石を投じたい。これが波及し、どの言語であっても迅速かつオープンに、制約なしに研究成果を発信できることがグローバルスタンダードになれば」と意気込む。