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地球外生物の発見を夢見て、宇宙ビジネスに挑む。ワープスペースが描く未来の経済圏~ワープスペースCTO 永田晃大さんに聞く~

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つくばで宇宙ビジネスを展開するワープスペース。宇宙ビジネスと一言で言ってもその内容はさまざま。ワープスペースはどんなことをしているのか、どのような思いで業務と向き合っているのかについて、CTOの永田晃大さんに聞きました。

より安価でより多くの地上局インフラを提供。人工衛星からの情報を常に受け取れる状態を作る

ーワープスペースの事業を教えてください。

「低軌道衛星を対象とした地上局インフラの提供」と「キューブサット用モジュールの発売」の2軸で事業を展開しています。

ー低軌道衛星とはどんなものでしょうか?

低軌道衛星とは地球の近くを回っている人工衛星のことです。人工衛星は、さまざまなデータを収集しています。しかし、宇宙からのデータを集めただけでは意味がありません。地球に住む私たちのもとには地上に送られたデータが、加工されて天気や地図といった情報になって届いています。この重要なデータを送る作業、実は地上から人工衛星が見えている間でしかできません。低軌道衛星はかなり早く回っていて、地上から見えるのは1日2~3度、1回10分ほどしかなのが現状です。限られた時間しかデータが下ろせず、それ以外の時間で故障などの問題が起こっても、すぐには気付けないようになっています。これを解決したいと思い「低軌道衛星を対象とした地上局インフラの提供」事業を展開しています。

ー「低軌道衛星を対象とした地上局インフラの提供」ということですが、地上局とは?

地上局とは、人工衛星のデータを受け取っている場所のことをいいます。この地上局設備を、世界中に分散させて設置しようと考えています。一つは10分間程度でも、数を増やしてバトンパス方式ができれば、人工衛星の状態を把握が可能となります。今もこの事業を展開している企業はありますが、弊社はより安価でコンパクトな地上局を、地球上に多く作ろうとしています。日本国内では鳥取・静岡・つくばに設置済みで、9月5日にウェブサービスとしてオンデマンド地上局サービスをローンチしました。

ー「キューブサット用モジュールの発売」事業とは?

キューブサットはアクセスポイントにアクセスすると宇宙から地上のインターネットにつなげる、いわば携帯電話の基地局のようなものです。このキューブサットを開発する段階で必要なモジュール(装置や機械、システムを構築する機能をまとめたもの)を開発しています。直近では、衛星の電源部分やメインとなるオンボードコンピューターの販売を予定しているのですが、現状では試験モデルができている段階です。今後、宇宙できちんと動くことの最終確認を経て宇宙用モジュールとして販売することを考えています。

筑波大学にてITF-2の打ち上げに成功。経験と知識を生かし、CTOとしてワープスペースに参画

ーワープスペースではどのような業務を担当していますか?

CTO(最高技術責任者)として技術全般の統括を行いつつ、実際に手を動かして回路図やプログラムを書くなどの仕事もしています。

ー永田さんはなぜワープスペースに入社しようと思ったのでしょうか?

創業者であり会長の亀田が、筑波大学の准教授だったことがきっかけです。亀田は当時、人工衛星プロジェクトの責任者でした。筑波大入学当初からそのプロジェクトに参画したいと思っており、2017年1月にITF-2というCubeSatの打ち上げプロジェクトに代表として関わりました。その後、亀田がITF-2の開発で培った経験や独自に行っていた開発などをビジネスにできないかと考えており、僕も案を出したり手伝ったりしていたので、「ぜひ一緒にやらないか」と誘ってもらえました。ベンチャー企業で起業するのはまさかの展開でしたが、「起業の経験は自分の糧になる」「ワープスペースでの経験が自分の夢につながれば」と思い、立ち上げから参加することにしました。

ー永田さんの夢とは?

宇宙への興味は、天文好きの父の影響で小さい頃からありました。高校3年生のときから「地球外生命の発見をしたい」という夢を持っています。

ーきっかけは何だったのでしょうか?

キュリオシティの打ち上げが成功して、火星に着陸したのを見たことです。地球外生命がいる可能性があることや、人が作ったロボットが火星に降り立つすごさを感じました。同時期に高校で自分の進路を考える機会があり、昔から興味があった宇宙を研究したいと思い、進学先を決めました。将来的には、自分が作ったもので地球外生命を探せるといいなと思っています。

自分の夢につながるよう、宇宙空間での経済活動の活発化を成し遂げたい

ー今後、ワープスペースで、そして個人的にも成し遂げたいことは何ですか?

「地球外生命の発見」が一番の目標です。それを達成するためには、宇宙経済圏を広げていくことが重要だと考えており、「宇宙空間での経済活動を生み出すこと」が目下の目標です。そのためには、輸送などといった宇宙空間のインフラが大切です。例えば通信インフラが整っていないと、見つけた情報を地球まで届けられないので意味がない。経済が動いていなければインフラを作るのは難しい。まずは宇宙空間で経済活動を生み出したいです。地球でできることを宇宙でも当たり前にできるようになる環境を作りたいと思っています。

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