筑波大が開発し、今鹿島小学校(つくば市今鹿島)の図書室で稼働している「図書紹介ロボット」が、新型コロナウイルス禍でも安定した利用率を保っている。
児童がパソコンに紹介したい図書と紹介文などを打ち込むと本が登録され、画面上にある本のタイトルをクリックするとロボットが表情と動きを交えながら音声で本を紹介する。今までに86冊の本が登録され、ほぼ毎日紹介文が聞かれている。コロナ禍でも利用率は下がらず、認知度が例年より高かったという。毎年行う全生徒を対象に行うロボットの使い方説明を、今年は希望者のみを対象にした少人数編成に変えたところ、「結果オーライだったが、自主的に参加する熱量がある児童が多かった。参加者たちが使い方を他のクラスにも広めてくれたおかげで例年より認知が広まった。継続的な利用も増えている」と筑波大修士2年の堀野航平さん。
同小学校では2016(平成28)年に同ロボットを設置した実験を始め、継続的な実験を行っている。読書好きな児童と苦手な児童の差が顕著であることから、「読書に興味を持つようなロボットを」と提案。筑波大学助教の大澤博隆さんは「つくばらしい取り組み」と話す。
大澤さんの研究室では「人間と機械を仲介する存在」である「HAI(ヒューマンエージェントインタラクション)」をテーマとする。iPhoneで使われるSiri(シリ)のような「分かりやすく言うと『人間らしいロボット』の研究」と大澤さん。同ロボットも「単にAIが機械学習をして精度を上げるというものではなく、あくまで子どもたちによる能動的な学習を支援するのが目的」と話す通り、子どもたちの意見を取り入れ試行錯誤する。「名前を付けると愛着が湧くのでは」という提案があり、2019年には名前を募集し「しゃべるん」と名付けられるなど、使い方や在り方を共に考える。
子どもたちの興味を引くためには見た目も重要で、「より愛され、利用されるように」とロボットにしっぽを加えたのは同大4年生の幡野陸さん。「子どもたち自身がコンテンツを作り、楽しめると利用率が上がる」と分析する。今後の課題は「20分の昼休みの間に登録を行わないといけないため、操作の時間が限られている。それをどうクリアするか」。
5年生で図書委員を務める市村藍妃さんは「今までにお薦めしたい本を3冊登録した。もうロボットがそこにあることが当たり前」とほほ笑む。6年生の水越久礼歩さんは「紹介文を聞きたくてよく使う。みんなもよく使っているのを見掛ける」と話す。幡野さんはこれからについて「ロボットへの愛着をどう高めるかを研究していく」と意気込む。